子宮頸がんの治療

広汎子宮全摘術 腹腔鏡か開腹かの選択

広汎子宮全摘術を受けるにあたって、施設によってはどちらかを選ぶことができる場合があります。

もし、選べたとしてどちらがどのようによいのか、私が決めた理由などをまじえてご紹介します。

開腹手術

臍の横あたりから恥骨のあたりまで縦切開で15cmほど皮膚を切開し行います。

腹腔鏡手術

5箇所に5〜12mmほどの小さい切開をいれて、そこから器具を腹部の中にいれて操作する手術方法です。

傷跡は5箇所(うち1箇所は臍)になります。

メリットとしては、術後の痛みが少ないことや大きな傷跡が残らないこと、回復がはやい、早期離床に繋がることがあげられます。

通常の手術であれば、入院期間の短縮も見込めますが、広汎子宮全摘の場合は摘出する範囲が変わらないため排尿障害は腹腔鏡手術でも後遺症として生じうるため入院期間への影響はそれほどないかもしれません。

2018年にアメリカから出た論文

LACC trialというアメリカのグループが発表した、子宮頸がんに対する開腹手術と腹腔鏡下手術、ロボット支援下による広汎子宮全摘術に対する予後の調査があります。(N Engl J Med. 2018 Nov 15;379(20):1895-1904.)

この結果が腹腔鏡下、ロボット支援下での低侵襲な手術の方が開腹手術に比べて無病生存率(病気のない状態での生存率)、全生存率(再発していても生きている人を含める)が低いというものでした。

(4.5年後の無病生存率は、低侵襲手術で86.0%、開腹手術で96.5%)

腹腔鏡手術では骨盤内再発が多いという結果で、この論文が出たことでとても衝撃が走りました。

一方、手技に問題があった(意訳:腹腔鏡が上手でない人が執刀したから)、この比較試験のデザイン自体に問題があったとする意見や、その後腹腔鏡と開腹手術で予後に差はないという論文も多く出されています。

開腹手術にすることに決めた理由

現時点で、腹腔鏡手術と開腹手術で予後が本当に違うのかを結論づけるのは難しいですが、私はこの論文が決め手となり開腹手術を選択しました。

もし腹腔鏡手術を受けて再発したときに、開腹手術をしていたら再発していなかったかも、と思いたくなかったからです。

大きな傷は残りますが、「根治」の可能性を少しでもあげたくてこの選択をしました。

ですが、将来的には「予後について腹腔鏡手術が開腹手術に劣らない」というエビデンスが蓄積されて、手術による身体的な負担が少しでも少なくなるといいなと願っています。