広汎子宮全摘手術では、多くの場合卵巣を残すか摘出するか選択できます。(転移がなさそうな場合に限る)
残す場合も摘出する場合も、それぞれにメリット、デメリットがあります。
今回はそれを説明したいと思います。
卵巣を残す場合
メリット
卵巣を手術で摘出することにより女性ホルモンが急激になくなり閉経と同じ状態になる「外科的閉経」を防ぐことができます。
デメリット
卵巣転移のリスクがあり、手術後に卵巣に再発する恐れがあります。
全体でみると扁平上皮癌では卵巣への転移は約0.5%で稀ですが、腺がんでは2〜14%にみられます。
ⅠB期の扁平上皮癌の場合は卵巣転移のリスクは高くないですが、腺癌の場合は、それ以上の扁平上皮癌の場合は卵巣を温存することに慎重になる必要があります。
もし残す場合でも、放射線治療が必要になれば放射線治療によって卵巣機能が廃絶することもあります。
卵巣を摘出する場合
メリット
上述した、卵巣転移、再発のリスクがなくなります。
デメリット
卵巣はエストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンを分泌しています。
50歳前後になると、卵巣の機能が低下して閉経しますが、手術や放射線治療、化学療法などの治療によって自然閉経の前に閉経することを「外科的閉経」といいます。
これに伴い、「卵巣欠落症状」といういわゆる更年期障害と同じような症状が出てきます。
のぼせ感、ほてり、発汗などのホットフラッシュが有名ですが、疲れやすさ、肩こり、抑うつ、イライラ感、しわの増加、コラーゲンの減少など症状はさまざまです。
他にも、コレステロールが高くなる脂質異常症(放っておくと心筋梗塞や脳梗塞につながります)や、骨粗鬆症などにもなりやすくなると言われています。
現在は、HRT(ホルモン補充療法)を行うことが多く、薬でエストロゲンを補充することによって、これらの症状をおさえる手法がとられています。
更年期障害、骨粗鬆症、脂質異常症いずれにも有効であり、他の精神的な症状や皮膚症状にも有効ではないかといわれています。
卵巣を摘出するかどうか
摘出する場合、残す場合のメリット、デメリットをご紹介しました。
転移の可能性は少なくしたいけれど、外科的閉経も怖い、という理由で、1つだけ卵巣を取る、という方もいます。
それぞれにメリット、デメリットがあり、難しい問題ですが、みなさんもよく考えて決断してください。