子宮頸がんの治療

広汎子宮全摘後の排尿障害

広汎子宮全摘をおこなった後、高確率(80-90%)で合併する排尿障害について説明します。

広汎子宮全摘術のあと、なぜ排尿障害になるのか

子宮頸がん、子宮体癌、卵巣癌では病変の広がり具合によって「広汎子宮全摘術」が必要になります。

子宮、卵管、膣の一部、基靱帯(子宮を支える靱帯)など骨盤内を広く摘出する手術法です。

膀胱は交感神経と副交感神経という2つの自律神経でその働きがコントロールされています。

これらの神経は子宮頸部から直腸の外側にかけて網目状に張り巡らされており、「骨盤神経叢」といわれています。

広汎子宮全摘術では、この骨盤神経叢や、膀胱・直腸への神経の枝を切除する可能性があり、それによって排尿障害や便秘が起こります。

排尿障害ってどんな症状?

普段は、膀胱におしっこがたまったら尿意を感じて、トイレへ行き、座ると尿が出てきて、全部出たら止まる。

こういう流れだと思います。

排尿障害になると、①尿意を感じにくい、②排尿しようとしても出ない、③途中で止まってしまって全部出せない(残尿)、④無意識に尿が漏れてしまうなどの症状がでます。

排尿障害の後遺症になったら

後遺症として排尿障害になったら、排尿訓練を行います。

水分を積極的に取りつつ、定時でトイレへ行く

だいたい1時間に100mlのペースで日中水分を摂取します。1日の目標は1500ml。

尿意があるとき、または尿意がないときは3-4時間を目安にトイレへ行きます。

「尿がしたい」という感覚のほかに、下腹部が張ってきたり、痛くなってきたりという症状がわかりやすいです。

1回の尿量が400mlを超えないようにします。(膀胱にたまりすぎて伸び切ってしまうと尿を出す力が弱くなるため)

自尿を計測し、その後残尿測定をします。

↓このユーリパンというプラスチックの容器をトイレにセットして尿を計測します。

私が入院していた病院はブラッダースキャンという残尿測定専用の簡易的な機械があり、それでだいたいの残尿がわかる仕組みでした。

残尿が多そうであれば看護師さんに導尿してもらって、量を確認します。

これを継続します。

・尿をするときに腹圧をかけすぎると腎臓や尿管に負担をかけるので、軽くいきむ時間は2-3分にする

・休憩して再度いきんでもOK

・下腹部を軽く押してみるのもよい

・導尿してもらうときも、管が入って尿が出てきたら腹圧をかける練習をする

排尿障害の薬

術後すぐは尿意も感じず自尿も0という人がほとんど。

そんなときは内服薬を飲むこともあります。

エブランチル(α遮断薬)

神経因性膀胱(神経が原因で排尿障害になっている状態)に使える薬です。

1回1錠、1日2回の薬です。

高血圧の薬としても使われており、副作用として血圧が下がる場合があります。

ウブレチド(コリンエステラーぜ阻害薬)

排尿筋の緊張を高め、手術後、神経因性膀胱などの低緊張性膀胱による排尿困難を改善する薬です。

膀胱が収縮しやすくなることで尿が出やすくなる仕組みです。

1回1錠、1日1回の薬です。

副作用として、下痢や発汗などの症状が起きる場合があります。

自己導尿

様子を見ても導尿が必要そうなら、自己導尿を覚えて退院します。

自宅用の自己導尿カテーテルがあり、それを持って帰ることになります。

尿意がなく定期的にトイレへ行って自己導尿する人、尿意はあるけど残尿が多く自己導尿が必要な人、朝や夜のみ自己導尿が必要な人、など回数は様々です。

人によりますが、時間はかかってもいつかは自己導尿を卒業できると看護師さんに言われました。

半年、1年、2年かかるかもしれませんが、卒業できます、と。

私も最初は怖かったですが、自己導尿は覚えたらスムーズにできるようになります。

排尿障害の実際の記録

実際の経過はこちらを参照してください。