子宮頸癌には大きく分けて2種類あります。
扁平上皮癌と腺癌です。
この2つの違いについて少しまとめたいと思います。
※子宮頸癌ガイドライン2022を参考にしています。2023年7月時点での情報で、今後標準治療が変更になる可能性もあります。
腺癌と扁平上皮癌それぞれの割合
子宮頸癌のうち、扁平上皮癌が75%、腺癌または腺扁平上皮癌(腺癌と扁平上皮癌のMIX)が25%と言われています。
少し前までは腺癌は20%と言われており、最近腺癌になる人が増えてきているようです。
癌ができる場所
子宮頸部の入り口には扁平上皮細胞が、内側に腺細胞があります。
細胞診では子宮頸部の入り口を擦過(ブラシでこする)してそこにある細胞を調べます。
腺癌がある場合も、上から細胞が落ちてくるのでがん細胞が検出されます。
細胞診で精密検査が必要と判断されると、次はコルポスコピー検査+組織診にすすみます。
子宮頸部の入り口をカメラで拡大して、そこに酢酸をかけて病変がないかを確認します(コルポスコピー検査)。
酢酸をかけた際の色調の変化を参考に、がん細胞がありそうなところを狙って組織診(パンチで何ヶ所かパチンパチンと取る)をします。
わかりにくい場合は適当に組織を何箇所か取ってきます。
この検査では子宮頸部の入り口付近にできる扁平上皮癌は診断しやすいのですが、入り口付近には腺細胞はないので、内側にある腺癌はコルポスコピー下の組織診では見つかりにくいです。
(上記の絵では頸部があいていますが、実際には頸部は閉じているので入り口より奥側をコルポスコピー下組織診で取ってくることはできません。)
怪しい場合はより内側の細胞を狙って、匙で子宮頸管内の細胞・組織を書き出してくることもあります。(頸管キュレット)
Skip Lesion(スキップ病変)
扁平上皮癌は連続性があります。
例えば円錐切除で癌のあるところを切り取ったとして、断端陰性(切除した部分の端っこに癌が接していない)の場合は取り切れたと判断してよいです。
しかし、腺癌は連続性がない病変「Skip lesion」がある可能性があり、断端陰性でも子宮側に残存病変があることがあります。
扁平上皮癌の上皮内癌は円錐切除で終わることができますが、腺癌の上皮内癌の場合は20%が円錐切除後も子宮側に残存病変があると言われており、子宮摘出が標準治療となります。
他病変への転移
腺癌は扁平上皮癌に比べて、卵巣への転移が多いと言われています。
扁平上皮癌ではⅠB期で卵巣転移は0−0.5%、ⅡB期0.6−2.2%ですが、
腺癌ではⅠB期で0.8−3.8%、ⅡB期では7.1−16%と卵巣転移率が高くなります。
根治性を高めるためには卵巣摘出をしたほうがよいですが、卵巣機能の廃絶により様々な症状が起こります。
更年期症状が起きたり、
骨粗鬆症のリスクが高くなったり(骨粗鬆症による椎体骨折の頻度は35歳未満で卵巣摘出をすると5.2倍、44歳以下で2.1倍に増加)、
虚血性心疾患(心筋梗塞)の罹患率が8.7倍になるなど深刻な問題も多くあります。
卵巣を温存するかどうかはメリット、デメリットがあり個々の症例によっても違います。
卵巣を温存した場合も、術後の放射線療法によって卵巣機能が廃絶することもあります。
治療法
扁平上皮癌は放射線の感受性がよいのですが、腺癌には放射線は効きにくいです。
腺癌においては根治的放射線治療よりも手術群のほうが予後がよくⅠB期、Ⅱ期に対しては広汎子宮全摘出術が推奨されています。
腫瘍径3cm未満の小さな腺癌に対しては放射線治療を主治療としても予後良好であるとの報告もあり、手術困難例については根治的放射線治療が選択される場合もあります。
予後
扁平上皮癌よりも腺癌は予後が悪いと報告されています。
(個人的にはこの数字でかなり落ち込んだので、数字はあえて出しません)
ただ、この数年間で新薬、分子標的薬も多く出てきており、今後ランダム化比較試験でエビデンスが蓄積されれば、これからの数年間で予後も改善する可能性があります。