子宮頸がんの治療

子宮頸部腺癌の病期と術式、後遺症

子宮頸癌は、その病期に応じて術式が決まります。

なので術前にCTやMRIなどの画像検査、円錐切除などをして病期を決定してから治療へ進みます。

※子宮頸癌ガイドライン2020に沿って記載しています。2023年7月時点での情報で、今後治療が変わる可能性もあります。

子宮頸癌の新進行期分類のポイント

子宮頸癌の病期は2018年に改訂(日本では2021年から)されました。

改訂された主なポイントはこちら

・ⅠBが4cm未満か4cm以上かでⅠB1、ⅠB2とわけられていましたが、腫瘍最大径の計測に従来の4cmに2cmも新たな指標に加わり、ⅠB1期、ⅠB2期、ⅠB3期の3つに細分類されました。

・旧分類の日産婦2011で用いられていたⅠA期の診断基準から縦軸(水平)方向の浸潤の広がりの計測が削除されました。

ⅢC期が新たに加わりました。

子宮頸癌の進行期分類(日産婦2021)

扁平上皮癌でも腺癌でも進行期分類は共通しています。

Ⅰ期癌が子宮頸部に限局するもの
ⅠA期肉眼的には見えないがん。間質浸潤の深さが5mm以内
ⅠA1期間質浸潤の深さが 3mm 以下のもの
ⅠA2期間質浸潤の深さが 3mm をこえるが,5mm 以下のもの
ⅠB期肉眼的に見えるがん、あるいは組織検査でⅠA期をこえるがん
ⅠB1期病巣が2cm以内のもの
ⅠB2期病巣が2cmをこえるが4cm以下のもの
ⅠB3期病巣が4cmをこえるもの
Ⅱ期癌が子宮頸部をこえて広がっているが,腟壁下1/3 または骨盤壁には達していないもの
ⅡA 期腟壁浸潤が腟壁上 2/3 に限局していて子宮傍組織浸潤は認めないもの 
ⅡA1期腫瘍最大径が 4cm 以下のもの
ⅡA2期腫瘍最大径が 4cm をこえるもの
ⅡB期子宮傍組織浸潤が認められるが,骨盤壁まで は達しないもの
Ⅲ期癌浸潤が腟壁下 1/3 まで達するもの,ならびに/あるいは骨盤壁にまで達するもの,ならびに/あるいは水腎症や無機能腎の原因となっているもの,ならびに/あるいは骨盤リンパ節ならびに/あるいは 傍大動脈リンパ節に転移が認められるもの
ⅢA期癌は腟壁下 1/3 に達するが,骨盤壁までは達していないもの
ⅢB期子宮傍組織浸潤が骨盤壁にまで達しているもの,ならびに/あるいは明らかな水腎症や無機能腎が認められるもの(癌浸潤以外の原因に よる場合を除く)
ⅢC期骨盤リンパ節ならびに/あるいは傍大動脈リンパ節に転移が認められるもの(r や p の注釈をつける)
ⅢC1期骨盤リンパ節にのみ転移が認められるもの
ⅢC2期傍大動脈リンパ節に転移が認められるもの 
Ⅳ期癌が膀胱粘膜または直腸粘膜に浸潤するか,小骨盤腔をこえて広がるもの 
ⅣA期膀胱粘膜または直腸粘膜への浸潤があるもの
ⅣB期小骨盤腔をこえて広がるもの

子宮頸部腺癌の病期ごとの術式

ガイドライン2022に沿って説明します。

0期:上皮内癌

この場合は上皮内に限局しているのでほぼ100%取り切ることができます。

扁平上皮癌であれば円錐切除で終われることもありますが、腺癌の場合は基本的には単純子宮全摘(子宮と卵管のみ摘出)です。

手術時間は3時間ほどで終わります。入院期間は5-10日くらいです。

腹腔鏡の場合、開腹手術よりも入院期間は短くなることが多いです。

妊娠希望がある場合は経過観察になることもあります。

ⅠA期

単純子宮全摘〜準広汎子宮全摘(単純子宮全摘より少し広い範囲で膣や基靱帯の一部も切除します)となります。

脈管侵襲がある場合は骨盤内リンパ節郭清をおこないます。

妊娠を強く希望する場合は円錐切除や広汎子宮頸部摘出術(トラケレクトミー)という妊孕性を温存する手術ができる場合もあります。

腺癌の場合、残した子宮に高率でがんが残っているとも言われており、メリットデメリットを考えた上で慎重な経過観察が必要になります。

ⅠB期〜Ⅱ期

広汎子宮全摘術+骨盤内リンパ節郭清が基本治療です。

婦人科手術の中でも1番長くかかる手術で6〜8時間ほどかかります。

後述しますが、排尿障害を高率に合併するため、排尿訓練が必要となり入院期間は12-20日ほどになります。

腹腔鏡の場合、傷は小さく開腹ははやいですが、排尿障害については変わらないので入院期間の短縮にはつながらないことが多いです。

Ⅲ〜Ⅳ期

手術では取りきれないと判断され、化学療法や放射線治療が主治療になります。

現在は、同時化学放射線治療(CCRT)を行うことが多いです。

術後の後遺症について

排尿障害

広汎子宮全摘術に高確率(80-90%)に合併します。

排尿するときに使う神経が骨盤内にあるのですが、その神経を傷つけたり取ってしまったりして神経障害が起こります。

尿意を感じにくい、排尿しようとしてもできない、残尿が多いなどの症状が出ます。

入院中の排尿訓練によって改善することが多いですが、改善が乏しい場合は自己導尿を覚えて退院し自宅でも自己導尿を続ける必要があります。

数週間で卒業できる人もいれば半年から数年ほど自己導尿をして卒業する人もいます。

排尿障害についてはこちらの記事で。

腸閉塞

開腹手術全般で起こる可能性があります。術後、腸の動きが悪くなり、便が出なくなってしまう状態です。

開腹手術を受けた場合、腹腔内が癒着するため、数年後に発症することもあります。

鼻から胃にかけてチューブをいれて腸を休ませて改善することもありますが、必要であればストーマ(人工肛門)になることもあります。

リンパ浮腫

リンパ節郭清をすると5〜10%ほどに発症します。

術後早期〜10年以上たってから発症することもあります。

リンパ節をとるとリンパの流れが悪くなり、足や会陰部がむくみやすくなります。

ひどいときはゾウのような足になってしまい、痛みも生じます。

日頃からリンパマッサージや下肢挙上、スキンケアなどでケアしつつ、必要であればリンパ浮腫外来などで相談しましょう。

更年期症状、骨粗鬆症

卵巣を摘出した場合に起こります。

卵巣から出ていたホルモンがなくなることで、ホットフラッシュなどの更年期のような症状、脂質異常症、骨粗鬆症などの症状が起こります。

ホルモン補充療法によって、女性ホルモンを補うことで症状をおさえることができます。

再発リスクを上昇させないという報告があり、婦人科手術後でも安心して使用することができます。